「それで? ゴーヤ チャンプルー

「それで? どうだったの?」
 尋ねるフレイヤに騎士は首を横に振った。そこは教会dha epa dhaのオルタンシア教皇の執務室だったdha epa dha。やはり前回集まった時同様、オルタンシア、レオンハルト、ガブリエル、フレイヤ、そしてミモザが集まっている。そこに直接ステラの元へと強制執行に行った騎士が報告に訪れていた。
 彼は淡々と告げる。
「ラブドロップは見つかりませんでした」ポリ ペプチド
それにフレイヤは盛大に顔をしかめた。
「なぜ……っ!」
「わかりません。けれど、彼女自身に隠蔽工作をするほどの賢しさはないように見えました。もしも隠したとしたら、それは……」
 そこで彼は気まずそうにちらり、と近くに立つレオンハルトのことを見る。
「聖騎士殿の弟ぎみのほうかと」
「そうか」
 レオンハルトは淡々と頷く。
「アベルのことは俺の弟だからと遠慮するアントシアニンの効果ようなことは不要だ。君達の任務をしっかりと遂行してくれ」
「無論です。例えどなたのご身内であろうと我々が手を抜くことはありえません」
 むっとしたように騎士はそう告げた後、フレイヤの方へと再び向き直る。
「アベル殿が外から戻られたご様子でしたので、もしかしたらこちらの動きを察して処分したのかと一応宿の他の部屋や周辺のごみ収集場なども探ったのですが、見つからず……。ひとまずはジーン殿とマシュー殿を取り急ぎ保護させていただき、今は病院で静養してもらっています。医師の見立てでは数日のうちに薬は抜けていくだろうとのことです」
「………気に食わないわね」dha
 フレイヤはドスの効いた声で吐き捨てる。
「状況証拠はこの上もなく彼女が黒だと示しているのに捕らえることができないだなんて……っ」
「まぁ、物的証拠か現行犯でもない限り逮捕は難しいですからね」
 オルタンシアはそんな彼女を宥めるようにそう言った。
「魔薬は尿検査や血液検査でも検出は困難ですし……、今回は仕方がないでしょう」
「犯罪者を野放しにするなど、我が騎士団の威信に関わります! ただでさえ、わたくしの弟子に手を出すなんてっ。こちらをこけにするにもほどがある……っ」
「そうは言っても仕方ねぇだろ。まぁ、今回逮捕できなかった容疑者はそこそこいるが、少なくとも元凶は捕らえた。もうあの薬が供給されることはねぇ。今回の件はこれで終いだ」
 いきり立つフレイヤにガブリエルが亜鉛 の サプリ冷静に告げる。それに歯噛みしつつもこれ以上はどうしようもないことも理解している彼女はそれ以上の言葉を控えた。
 フレイヤが落ち着いたのを見てとって、オルタンシアは皆の注目を促すように手を数回叩いて見せる。
「今回は残念な結果でしたが、決して我々は犯罪者に屈したわけではありません。現に密売人は捕らえ、事件の収束には成功いたしました。残りの購入者についても目星はついているのです。これは犯罪者予備軍をピックアップ出来たと言ってもいい。一度誘惑に負けた者はまた違う形で誤ちを犯す可能性が高い。その時には、彼らに二度目はないということを思い知らせてあげましょう」
 彼のすみれ色の瞳がうっすらと微笑む。そこに映るのは慈悲ではなく断罪の光だ。
「この国に住む人々の平和と安寧のために」
 最後に彼は祈るようにそう言った。

 そこは病室だった。看護師や医師は突然降って湧いた大量の精神汚染の患者達の対応に追われて慌ただしく走り回っていた。
 その廊下を美しい女性が肩で風を切っゴーヤ チャンプルーて歩いていた。彼女は銀色の髪を風に流し、銀色の瞳に決意をみなぎらせている。
 そんなフレイヤの後ろをちょこちょこと物見遊山気分でミモザはついて歩いていた。
 とはいえ別に遊びに来たわけではない。手にはちゃんと果物を持っている。前回ミモザが怪我した際はジーンに迷惑をかけたので、そのお礼とお返しを兼ねたお見舞いに来たのである。
 フレイヤは目当ての病室を探し当てると勢いよくその扉を開けた。
「ジーン!! わたくしの不肖の弟子!! なんであんな怪しい奴からの飴なんて口にしたの!!」
 開口一番叱責である。
 まぁ、フレイヤの心労を思えば無理からぬことかも知れないが、被害者であるジーンには少々酷な話だ。
 彼らは二人部屋にいた。身体的には異常がないからだろう、それぞれのベッドに腰掛けてマシューとジーンは何かを話しているところだったようだ。
 怒れる師匠の登場にジーンは素早く立ち上がりピーンと背筋を伸ばして直立すると「大変申し訳ありませんでした!!」と綺麗なお辞儀をかました。
 きっちりと分度器で測ったかのような90度のお辞儀である。
(体育会系……)
 人のことは言えないが、ミモザはそれを見てしみじみと思った亜鉛
 見るからに文化系のマシューなどその光景を見て若干引いている。
「その、まさか魔薬が入っているとは……。先日のお詫びだと渡されまして……」
「おおかた可愛い女の子から渡されたからって受け取ったんでしょう! 情けないわ!!」
「も、申し訳ありません!」
 師弟のやり取りを尻目にミモザはすすす、とマシューへと近づくとジーン宛の果物は勝手にジーンのベットサイドへと置き、マシュー宛の果物を彼に差し出した。
「ちなみにマシュー様はどうして食べたんですか?」
「………、あんな子だとは知らなかったんだよ。ちょっと極端な所があるとは思ってたけど……」
 そこまで言ってじろりとマシューはミモザを睨む。
「あんたのお姉さんだと言うのも一応理由としてはあったよ」
 それにおや、とミモザは首をひねる。
「マシュー様、僕が突然なんの理由もなく飴をあげたら食べるんですか?」
「…………」
 マシューは差し出された果物を受け取ろうとした手をぴたり、と止めてしばし悩んだ。
「いや、うん、そうだな……。あんたからのは……、悩ましいな。お見舞いであれば受け取るけど、なんの理由もなしか……」
「まぁ、あげませんからそんな真剣に悩まないでください」
「あんたはそういう所だよ」
 じろりと再び睨むとマシューはふん、と鼻を鳴らして果物を受け取った。
「まぁ、あんたは利口だからこんな目撃者の多い所でクロム毒殺はしないだろう。こっそり渡されたら受け取らない!」
「はぁ……」
 まぁ、確かにこんなに目立つ場所で白昼堂々毒殺はしないだろう。
 そのまま二人はしばしフレイヤ師弟の叱責と謝罪が終わるのを待ったが、二人は全く終わる気配を見せない。
(帰ろうかな……)
 時間を持て余してジーンへの挨拶はまた今度にするかと諦めかけたところで、「なぁ」とマシューが声をかけてきた。
「あんたの姉ってなんか妄想癖でもある?」
「なぜですか?」
 突然の質問に驚く。正直思い込みは激しいが、と思いつつミモザは尋ねた。するとマシューは少し難しい顔をして頭を掻く。
「いや、なんかこれから起こることがわかるとか、自分は人生をやり直してるとか言っててさ」
「………っ」
 ヒュッと呼吸が鋭い音を立てた。言葉が出ない。
 そんなミモザの様子には気づかずにマシューは愚痴るように続ける。
「なんか前回が前回がってずっと言っててさ。俺たちは前回も仲が良かったとか、女神様にお願いしたからやり直せたとか……、薬が効いてる時は可愛いと思って聞いてたけど、今思い返すと結構ヤバいこと言ってたよ」
「そ、そうですか……」
 ミモザにはそう返すのがやっとだった。
マカマカ サプリサプリメント マカクロム

 さて、昨日亜鉛 の サプリ

 さて、昨日に引き続きミモザは塔の攻略に来ていたアントシアニンの効果。第3の塔くらいまでは塔の中に野良精霊亜鉛の効果も出現せずレベルが低くても比較的さくさく攻略できるため、皆あまり間を開けずに攻略するのが主流である。ミモザもそれに倣うことにした。
 次のターゲットである第2の塔は暗視ができるようになる祝福の塔である。この塔でやることは第dha epa dha1の塔とあまり変わらず、鍵を探すのは一緒である。しかし暗闇の中で、である。自分の指先も見えないような暗闇を進み、その最中で鍵を見つけるという試練だ。当然この鍵にも金銀銅のランクが存在するが、今回は視認して選ぶことなどできないため、暗闇の中でどれだけたくさんの鍵を見つけられるかが勝負となる。
 かくして、ミモザは今、
(気まずすぎる……)
 何故かステラとアdhaベルと共に塔の入り口で入場確認を受けていた。
 理由は簡単だ。塔の前で偶然鉢合わせてしまったのである。

 先に来て入場の列に並んでいたのはミモザであった。そこに後から2人が来て、知らないふりをしてくれるかと思ったら「あら、ミモザ」とステラが声をかけてきたのだ。
(帰りてぇ……)
「ねぇミモザ、聞いてる?」
 それから延々とステラに話しかけられ続けているミモザである。その態度に段々と昨日あったと思っていた出来事はもしかしたら夢だったのだろうかと疑い始めていた。
 まぁさっきからチロが亜鉛 サプリイライラとミモザの肩で地団駄を踏んでいるのでおそらく現実にあったのだろうが。
「お姉ちゃんって気まずいって感情知ってる?」
「……? もちろん、知ってるわよ?」
 なら話しかけてくんなよ、とは言えない小心者のミモザである。
 ちろり、とその隣でやはり気まずそうに貧乏ゆすりをしているアベルを見る。彼と目が合った。
「………やめさせたから」
「は?」
 アベルはちっ、と舌打ちを一つすると、周囲をはばかるように小声で告げた。
「昨日の。野良精霊狩りだよ」
「……ああ」
 そうですか、とミモザは頷く。もはやミモザには関係のない話だ。
(でもそっか、辞めさせられたのか)
 それは素直に賞賛に値する。ミモザが諦めてしまったことを、アベルはやり遂げたのか。
 だからと言ってアベル亜鉛の効果のことを許すつもりは毛頭ないが、憂いが一つなくなったことは確かである。
「ついでにここから連れ出すか僕に話しかけないようにしてくれない?」
「それはまぁ、俺には荷が重い」
 ミモザはちっと舌打ちをした。
 いまいち使えない男である。

 無事に入場許可をもらい塔の中に入る。とたんにミモザの体は一寸先も見通せないような暗闇へと呑み込まれた。
 試しに手を伸ばして目の前にかざして見るが、その輪郭はおろか、動かしてみても存在すら感じられない。
 手をそろりそろりと横へと伸ばす。何かごつごつとした岩肌のようなものにその手は触れた。どうやら壁らしい。
 背後で扉の開く音がし、一瞬光が差し込んだ。だがその眩しさに目が眩んでいる間に再び闇に包まれる。
 後ろに並んでいた人物、おそらくステラかアベルが入ってきたのだろう。ミモザは2人に追いつかれないように慌てて壁伝いに前へと歩き出した。
 サプリメント マカ誰かの足音がまばらに聞こえる。息づかいやひそめられた悲鳴も。誰かが近くで転んだ音がした。人の存在を感じるのに何も見えないというのはとても不気味な状態だ。
 その時ミモザの左側を誰かが通り過ぎた。足音の遠ざかっていく方向とその素早い歩行からして試練を終えて帰っていく人かも知れない。祝福により暗視の能力を手に入れたのだろう。
(鍵を探さなきゃ)
 暗闇の中進むことに夢中になって、すっかり忘れるところだった。
 しかし探すといってもこれでは進むだけで精一杯だ。ふと思いついて足をずりずりとするように動かす。その時こつん、と何かが当たった。屈んでそれに触る。
(ただの石ころか)
 そのまましばらく手で地面を弄っていると思いっきり誰かに手を踏まれた。
「いった!」
「おっと、すまねぇ」
 見知らぬ誰かはそれだけ言うとまた歩き始めたようだ。徐々にその足音は遠ざかっていく。
 屈んでいるのは危険だと判断してミモザは地面を探すことを諦めて立ち上がる。先ほどまでたどっていた壁に再び手をつくと、その壁を手当たり次アントシアニンの効果第に撫で回した。
(……お?)
 しばらくするとくぼみのようなものに触れた。その中に手を突っ込む。何か硬くて小さな物がある。それを握って引っ張り出して見るが、まぁ、見えない。
(そりゃそうだ)
 とりあえずすべすべとした冷たい手触りは金属っぽい。形も鍵の形をしている気がする。判別は諦めてとりあえずミモザはその鍵らしきものを持ってきていた巾着袋の中へと放り込んだ。
(これは長丁場になるなぁ……)
 どこまで進めばゴールなのかもわからない。しかもミモザの記憶が正しければこの塔の内部は基本一本道ではあるものの、ちょこちょこすぐ行き止まりになる分かれ道があったはずだ。
(まぁ、いい)
 なにせミモザは誰もがすぐに攻略する第1の塔におよそ7時間も居座ったという華々しい実績の持ち主である。長期戦はいろいろな意味で得意だ。
「がんばるぞー、おー」
「チー」
 小さな声でチロと一緒に気合いを入れるとミモザはまたそろりそろりと歩き出した。

 扉が開く。
「ううっ」
 眩しさにミモザはうめく。どうやら最上階にやっとたどり着いたらしい。
 その部屋にはミモザと同じように暗闇を歩いてきた人達が複数人立っていた。鍵を挿す扉の前には行列ができている。
マカ どうやら第一の塔はすぐに終わってしまう試練のため塔の中にいる人もまばらだったが、暗闇を進むという時間のかかる試練ゆえに渋滞が発生しているらしい。暗闇の中でも確かに見えはしないがたくさんの人間の気配を感じていた。
「さてさて」
 ミモザは手に握っていた袋を見る。小さな巾着袋はぱんぱんに膨らんでいる。
 豊作である。
(なかなかに頑張ったんじゃなかろうか)
 人が多かったためあまり一ヶ所に長居は出来なかったが、そのわりにはなかなかの数の鍵を見つけられた。
(もしかして金の鍵もあったりして)
 宝くじの当選番号を確認する気分でにまにまと笑いながらミモザは袋を開けて中を見た。
 閉じた。
 もう一度中を見た。
 銅の鍵しか入っていなかった。
「……………」
 ミモザは無言でのろのろと歩くと広い部屋の隅の方へと移動してそこに座り込んだ。
「いいんだ、わかってたから。僕なんてどーせ、どーせ」
 そのまま体育座りになり地面にのの字を書く。
「えーと、大丈夫か?」
 その時聞いたことのある声が話しかけてきた。その不愉快な声にミモザはきっ、と睨みを効かせる。
「他の誰に言われてもいいけどお前からだけはそんなセリフは言われたくないっ!!」
 声の主はアベルだった。彼は手に銀の鍵を握っている。
「わ、わりぃ」
「謝るなぁ!余計惨めになる!うわーん!!」
「あらら、ミモザ、可哀想に。だめよ、無理をしちゃ」
 そう言って歩み寄ってきたステラの手には金の鍵が握られサプリメント マカていた。
 ミモザはさらに泣いた。
 ステラはミモザの握る袋を引っ張って中を確認する。その中身が銅の鍵しかないことを見て取ると少し笑った。その後思案するように指を口元にあてる。
「でも困ったわねぇ、銅の鍵じゃあ暗闇の中あの道を戻るのは大変だわ。そうだ、手を繋いであげる。私たちと一緒に帰ろう?」
 そう言ってにっこりと差し出された手を
「や、やだ」
 ミモザは拒絶した。
 頼むから放っておいて欲しかった。
クロムの効能マカ サプリクロム亜鉛 の サプリ

 さて、この世界マカ サプリ

 さて、この世界には野良精霊というものが存在する。
 ゲーム上では雑魚亜鉛 サプリ おすすめ敵とdha epaして冒険の途中でエンカウントする相手であり、その発生理由については語られないが、こいつらは実は人間が生み出した存在であったりする。
 精霊というのは人と共に生まれる。
 これはこの世界マカの常識である。
 ではなぜ野良精霊という人と繋がっていない精霊が存在するのかというと、彼らは元々人と共にあったのが様々な理由でその接続が切れてしまった存在である。
 もちろん、人と精霊の繋がりというのはそんなに簡単に途切れるものではない。
 事故なども稀にあるが、そのほとんどは人為的な行為により切断される。
 一番多い理由はより強い精霊と接続するたクロムめに自身の精霊を捨てて他人の守護精霊を奪うというもので、捨てられた精霊同士が自然交配し繁殖したのが野良精霊達だ。そのためその多くはとても弱く、大した力は持たない。
 しかし稀に突然変異でとても強い個体が生まれることがあり、それはボス精霊と呼ばれるのだが、そのボス精霊を自身の守護精霊とするために元々共に生まれた精霊を捨てる者も現れるという悪循環が起こっていた。
 国も教会も守護精霊を交換することや野に捨てる行為は禁じているが、取り締まりきれていないのが現状である。
 そしてもう一つ、彼ら野良精dha霊が雑魚である理由があった。
「ああ、いたいた」
 ミモザは草むらをかき分けながら森の中を歩いていた。視線の先にはうさぎにツノが生えた姿の野良精霊がいる。
 ひたすら生暖かい目で微笑む母親に昼食をふるまった後、仕事に戻る母を見送ってからミモザは森へと来ていた。
 ミモザ達の住むバーベナ村は森に四方を囲まれている利便性の悪いど田舎だ。そのため少し歩けばすぐに森へと辿り着く。
 森には大雑把に目印の杭が打ち込まれており、通常10歳前後の学校を卒業していない子どもはその杭よりも先に入ることを禁じられている。しかし今のミモザはその杭を通り越して森の奥深くへと足を踏み入れていた。
 当然、バレたら叱られる。
 しかし今は大人に叱られること以上に気にしなければサプリメント マカいけないことがあった。
「ゲームの開始は学校を卒業する15歳からだ」
 じっと草葉の影から草をはむ野良精霊の姿を見ながらミモザはチロへと話しかける。
「つまりそれまでに僕達はお姉ちゃんより強くなっている必要がある。それも大幅に、だ」
「チィー」
 チロもその方針には賛成のようだ。その同意に満足げにミモザは頷く。
「じゃあどうやって強くなるか。手っ取り早いのはもちろん、実際に戦ってレベルを上げることだ」
 とはいえ、ミモザもチロも野良精霊との戦闘などしたことがない。一応学校では戦闘技術の授業があったが、ミモザの成績は底辺を這っている始末であった。
(つまり、ここは不意打ちに限る)
 卑怯だなどと言うなかれ。これは命のかかったことなのである。
 ミモザはチロへと右手を伸ばした。チロは心得たように頷く。
 それと同時にその姿が歪み、形を変えた。
 それは武器だ亜鉛 の サプリった。細く長い金属の持ち手に先の方に棘が何本も突き出た鉄球が付いている。いわゆるモーニングスターメイスと呼ばれる棍棒である。槌矛と呼ばれることもある叩き潰すことに特化した打撃武器だ。
 これが守護精霊と野良精霊の一番の違い。
 人と繋がっている精霊はその姿を武器へと変じることができるのだ。これは昔は出来なかったのが徐々に人が望む姿に適応するようになり、そのような変化ができるように進化していったのだと言われている。
(やっぱり棘が生えている)
 チロの変化した姿を見てミモザは眉を顰めた。
 ゲームでのチロは序盤はただのメイスである。つまり棘の生えていない鉄球が先端に付いているだけのただの巨大な槌だ。しかしゲームの半ば頃より狂化が始まり今のような棘の無数に生えたモーニングスターメイスへと姿を変えるのだ。
 つまりやはりゲームよりも早く狂化してしまっているのだ。
 一度狂化してしまった者は進行することはあれど正常に戻ることはない、と言われている。
(うーん、まぁいいか)
 本当はそんなに軽く済ませていい問題ではなく狂化した個体は取り締まりの対象なのだが、ミモザの場合は早い亜鉛 の サプリか遅いかの違いで正直狂化しない選択肢を選べる気がしなかった以上諦めるしかない。
 一応ゲーム上では侮られ過ぎてなのか何故なのか、ミモザの狂化は主人公達以外にはバレてなかったように思う。
 チロも小さい精霊のため普段はなるべくポケットなどに隠しておけばなんとかなるだろう。
 さて、とミモザは野良精霊を見る。先ほどまで横を向いていた野良精霊は、少し移動してちょうどこちらに背中を向けていた。
(君に恨みはないがごめんよ)
 ミモザはチロを両手に持って大きく振りかぶると、
「僕たちの礎となってくれ」
 野良精霊へと向けて一気に振り下ろした。
 血飛沫が舞った。
クロムの効能亜鉛 の サプリクロム

 周囲は喧騒ゴーヤ

 周囲は喧騒に包まれていた。まだ日が高い時刻のため人の往来も激しい。故郷の村でゴーヤは決して見ることのできない賑やかで華やかな街の様子をステラは店主が店の亜鉛 サプリ おすすめ奥から出てくるまでの時間を潰すために眺めていた。ふと自身の手が目に入る。右手の甲に浮かぶ花のような紋様のその花弁のうちの一枚が金色に輝くのを見てステラはふふふ、と満足そうに笑う。
「お嬢ちゃん、計算が終わったよ」
 年配の店主がアントシアニンの効果ゆっくりと店の奥から出てくるとカウンターへ腰掛けた。彼は老眼鏡の位置を直しながら伝票と現金を弄る。
「全部でこのくらいの価格で買い取れるけどもね」
「わぁ!ありがとうございます!」
 なかなかの価格にステラは目を輝かせる。ステラの精霊騎士を目指す旅は順調に進んでいた。第1の塔では金の鍵を簡単に見つけられたし、野良精霊を倒すのも亜鉛の効果手間はかかるがそんなに難しくはない。初めは路銀稼ぎに苦労すると噂では聞いていたが、これだけ稼げるなら余裕で王都で過ごすことができる。
(ミモザは銅だったわね)
 卒業試合では遅れをとってしまったが、しかしミモザはミモザだ。やはりステラよりも劣っている。
(どうしてレオンハルト様はミモザを側におかれるのかしら)
 ステラの方が何においても優っているというのに。もしかしたら優しいレオンハルトはだからこそ妹に肩入れしているのかも知れなかった。いじめを受けて祝福も1番下のものしか受けることができない。確かに同情するには十亜鉛分かも知れない。
 上機嫌でお金を受け取ろうとして、店主はしかしそれを手で覆って渡すことを拒んだ。
「………? 店主さん?」
「これは一日で取ったのかい?」
 店主はじっとステラを探るように目を見つめてきた。それに首を傾げてステラは頷く。
「ええ、そう……」
「ステラっ!!」
 そこで息を切らしてアベルが駆けつけた。物資の買い出しの途中でステラだけ抜けてきたので心配していたのだろう。彼は必死の形相だ。ステラと店主の手元を見て、アベルは顔を真っ青に染めた。
「これは子どもの時から集めてた奴も混ざってるんだ!ガキの頃は換金なんてできなかったから!」
 そうして意味のわからないことを言う。ステラは首を傾げてアベルの言葉を訂正しようと口を開きーー、その口をアベルの手で塞ゴーヤ チャンプルーがれた。
「………。まぁ、いいがね、厳密に一日に何匹狩ったかなんてのを取り締まるのはどだい無理な話なんだ」
 そう言ってため息をつくと店主は金をアベルへと渡した。
「けどねぇ、お嬢ちゃんら、やりすぎはいかんよ。多少は見逃されるけどね、あんまりにも度が過ぎりゃあ絶対に取り締まられる」
 ちろり、と店主の灰色の目が鋭くステラの目を射抜いた。
「密猟ってやつはね、加減を知らんといけんよ」
「………肝に銘じておきます」
 ステラの開きかけた口をまた手で押さえて、アベルは神妙な顔でそう言った。
「行くぞ」
 そのままステラの手を強引に取って歩き始める。その歩く速度の速さにステラは戸惑う。
「アベル、ねぇ、アベル!」
「1人で動くなって言っただろうがっ」
 怒鳴って、アベルはステラの手を離した。そのまま2人は橋の上で立ち止まる。無言の中で川のせせらぎだけが鳴っている。
 振り返らないアベルの背中は震えていた。
「アベル……?」亜鉛 サプリ おすすめ
「わりぃ……、怒鳴るつもりはなかったんだ」
 アベルはゆっくりと振り返った。金色の瞳が、真っ直ぐにステラを見つめる。
「なぁ、ああいうことはやめよう」
「ああいうことって?」
「密猟だよ。一日に20匹以上狩るのはやめよう」
 ステラは首を傾げる。アベルが何故辛そうなのか、その理由がわからなかった。
「どうして?」
「法律違反だからだ。ミモザも言ってただろ。今回は見逃してくれたが、頻繁に繰り返すとまずい」
 ステラは表情を曇らせた。
「……アベルはミモザの味方なの?」
「お前の味方だよ!だから言ってるんだ!!」
 眉を顰める。ステラの味方なのにステラの行動を止める理由がわからない。
「でも、20匹以上狩ってもわたしは大丈夫なのよ。怪我もしないわ。そんな制限なんてなんの意味があるというの?」
「理由なんかどうだっていい!問題なのはそれが犯罪だってことだ!」
「アベル……」
「なぁ、ステラ、わかってくれ。俺はお前が大事なんだ。傷ついてほしくない」
「……わかったわ」
 本当はわからない。けれどアベルがあまりにも辛そうで、ステラはそう言っていゴーヤ チャンプルーた。
「ステラ……っ」
 アベルが安心したように破顔してステラを抱きしめる。
「ごめんね、アベル。アベルの嫌がることをして」
「いいよ! いいさ、わかってくれれば!」
 ぎゅうぎゅうとアベルに抱きしめられながら、ステラは思う。
(アベルが気づかないようにしないと……)
 知られるたびにこうもうるさく言われては面倒だった。

 かたん、と軽い音を立てて扉を開ける。
「ああ、ミモザ。帰っていたのか」
「レオン様っ!?」
 部屋から出た途端にかけられた声にミモザは飛び上がった。
 彼もちょうど帰ってきた所だったのだろう。自室の扉を開けて入ろうとした時にミモザが隣の部屋から出てきて鉢合わせたらしい。
「なにをそんなに驚くことがある」
 彼はそんなミモザの反応に憮然とした。
「いや、急に声をかけられたもので……」
 ついでに言えば考えごとをしていたせいでもある。
 ステラのことだ。
 姉のあの行為をレオンハルトに相談するかどうかを悩んでいたら、急に声をかけられて飛び上がってしまったのである。
(どうしようかな……)
 軍警に届け出るというのは選択肢には最初からない。なにせ本人の自白以外に証拠のないことであるし、積極的にステラを追い込む気にはなれないのだ。
(覚悟が甘いな、僕も。……奪うと決めたのに良い人ぶりゴーヤ チャンプルーたいのか?)
 しかしミモザはステラから聖騎士の座をぶんどる覚悟はしていても、ステラから社会的な立場を奪う覚悟はしていなかったのだ。元々はせいぜいが悔しがって地団駄を踏んで欲しかっただけである。笑えるほどに甘っちょろい報復を目論んでいたのだ。
 しかし見捨てると決めたからには、ミモザも覚悟を決めなくてはならないのだろう。
 例えステラがどうなっても、見捨て続ける覚悟を。
「ミモザ?どうした?」
 黙り込むミモザに不審そうにレオンハルトが問いかけた。それに一瞬逡巡し、
「なんでもありません。第1の塔の攻略をしてきました」
 結局ミモザは黙ることを選択した。
 しかしこれはステラに温情をかけたのではない。むしろ逆だ。
(落ちるなら、とことん勝手に落ちていってくれ)
 今ここでステラの罪状を食い止めてあげる義理はミモザにはないのだ。
 ステラの行為に目をつむる。
 それがミモザなりの、『ステラを貶めたい』という自分が抱く悪意に対する礼儀であり、言い訳の許されない悪人になるという覚悟だった。
亜鉛亜鉛 の サプリサプリメント マカ亜鉛 サプリ

 周囲には濃密亜鉛の効果

 周囲には濃亜鉛 の サプリ密な黒い霧が立ち込めていた。霧のゴーヤように見えるそれはある人物から放たれるオーラである。その証拠に、もっとも霧の深い場所に佇む人がいた。
 いつもはリボンでまとめられている藍色の長い髪は無造作に背中に流され、理知的だった黄金の瞳は昏く淀み、全てを諦ポリ ペプチドめたようだった。白い軍服は霧に覆われて、その身を守るように黄金の翼獅子が寄り添っている。その瞳は紅く、昏い光をたたえていた。
「どうして……」
 ステラは絶望に顔を歪めた。その青い瞳からは次々に涙が溢れて落ちる。
「どうしてっ!レオンハルト様っ!!」
「どうして?それを君が聞くのか……」
 レオンハルトは何かを投げ出した。それはオゴーヤルタンシア教皇だ。彼は血まみれでぐったりとしていた。ステラはその姿に悲鳴をあげて駆け寄る。なんとか蘇生を試みるがどこからどう見ても手遅れなことは明白だった。
 レオンハルトはそれを興味なさそうに見下ろしながら翼獅子に手を触れた。彼は心得たように自身を黄金の剣へと変じる。それを構えて、彼は告げた。
「君は聞いていたんじゃないのか?知っていたんじゃないのか?それとも本当に何もわからないのか……。まぁ、いい。もう、いい。何もかもがどうでもいい」
 剣を振りかぶる。アベルがとっさに飛び出して、ステラのことを抱えてマカ サプリ逃げた。
 轟音を立てて、レオンハルトの斬撃が空間を切り裂いた。そこだけ地面がぱっくりと割れ、軌道上の建物もすべてチーズのように焼き切れた。焦げた匂いと炎がちらちらと燃える。
「全てを壊す。この世界など、もうどうでもいい」
 風に煽られて右目があらわになる。そのただれた皮膚と紅玉の瞳を見てステラとアベルは息を呑んだ。

 悲報。敬愛する師匠が魔王だった。
(いや、ちょっと待て)
 寝起きの頭でミモザは考える。おかしい。ミモザの知るストーリーではレオンハルトは主人公を庇って死ぬはずなのだ。
 だとしたら今見た夢のストーリーは、
(2周目?)
 その瞬間にフラッシュバックのように夢でみた物語が一気に脳内に再生された。
「うぐっ」
 思わず顔を歪めて痛む側頭部を手で押さえるクロム
(……ああ、そうか、そうだったのか)
 そして納得した。
「僕はゲームの展開から、ちっとも抜け出せていなかったのか」

 2周目の物語は1周目の最後でステラが女神様にあるお願いをすることで幕を開ける。
 念願の聖騎士になると主人公は女神様への面会を許され、そして一つだけ願い事を叶えてもらえるというイベントが発生する。
 その際に出てくる選択肢は2つ。
 一つは『愛しいあの人と一生を共に』。
 これは1周目で攻略した恋愛キャラがいた場合に、そのキャラの愛情度とイベントを見た回数が基準値に達していると、そのキャラと結婚してエンディングを迎えるという王道展開へと続く選択である。
 そして問題はもう一つの選択肢。
『愛しいあの人を助けて』。
 これを選ぶことにより、画面は唐突にブラックアウトしてゲームは終わる。そしてタイトル画面へと戻るのだが、そこからもう一度初めからを選択してゲームを始めると1周目では攻略できなかった聖騎士レオンハdha epaルトが恋愛可能キャラクターとなり、そして物語が少しだけ変化するのだ。
 そして序盤でわかる一番の違い、それが主人公の妹ミモザが何故かレオンハルトに弟子入りしているのである。
 何故そのようなことになっているのかゲームの中では詳しく説明されないが、母親に話しかけると「学校でいじめられていたミモザのことをレオンハルトくんが気にかけてくれていて……、お勉強も見てくれて助かるわ」というような説明台詞を喋ってくれる。
 つまりはそういうことである。
 これまでのミモザが経験したのと同じ手順でゲームのミモザもレオンハルトに弟子入りしたのだろう。
 つまり全くゲームの展開から抜け出せていない。
 このルートの恐ろしいところは、やはり物語中盤でミモザは死ぬことだ。
 そして終盤でオルタンシア教皇も死ぬ。その2つが原因となってレオンハルトの狂化は進行し、魔王となって主人公達の前に立ちはだかることになるのだ。
「ええー…」
 ゲームから抜け出せていなかったショックと、どうしたらよいかが思いつかない現状にミモザは頭を抱える。
 一応レオンハルトは攻略対象なので、この後主人公に倒され正気に戻るのだが、ミモザが死んでしまうのがいただけない。あとオルタンシア教皇が死んでサプリメント マカしまうのもついでにいただけない。
(それにーー)
 もやっとした不快感が胸にこもる。この展開にまでいけばよっぽどのへまをしない限りはステラとレオンハルトは結ばれることになる。
(なんでこんなに不愉快なんだ……。まぁ、慕っている相手が気に食わない相手と結ばれると思えばこんなものか……)
 ステラとレオンハルトが寄り添っている姿など想像もつかない。想像しようとすると襲ってくる不快感に耐えきれず、ミモザはそれ以上考えることを放棄して別の方向へと思考を向ける。
(ーーようするに)
 ミモザとオルタンシアが死ぬとまずいわけである。逆に言えばその二つが起きなければレオンハルトがラスボス化することもない。
(本当に『僕』を殺したのは誰なんだ……?)
 全く思い出せない。今わかっているのはゲームの『ミモザ』は裏切られて殺されたということと、相手を『様』という敬称をつけて呼んでいたことだけだ。
(あとは状況的に、何かをお姉ちゃんに伝えようとして殺された……?)
 手がかりが少なすぎる。
 とりあえずミモザは死ぬなどごめんだ。
(犯人を……、見つけられればそれがベストだけど、難しいなら死ぬような状況を避けるだけでもいいはずだ)
 あと問題はオルタンシアだが、こちらは解決策が本格的に思いつかないのでひとまず保留とする。
「起きるかぁ……」
 昨日の勝利の高揚などはすっかり消え失せて、ミモザはぐったりとしながら布団から這い出した。
 今日はこdha epaれから王都に向かうというのになんとも目覚めの悪い朝である。
亜鉛 サプリ亜鉛の効果マカ

 かくして、その少マカ サプリ

 かくして、その少女は主人自ら送迎を行dha epa dhaうという好待遇で屋敷に足を踏み入ゴーヤれた。
「………っ!」
 その姿にマーサは息を呑んだ。マーサだけではない。主人の弟子の姿を一目拝もうと並んで出迎えた使用人達みんなが目を見張った。
 主人のレオンハルトは美しい男だ。それはマーゴーヤ チャンプルーサも認める。そんな主人と並んでもなんら見劣りしないどころか、それ以上に可憐で美しい現実離れした少女がその隣には立っていた。
 美しい飴細工のようなハニーブロンドの髪に海の底を思わせる青い瞳は何かを憂うように伏せられ、長いまつ毛がそれを扇状に繊細に覆っていた。肌は雪のように白く透き通って唇はふっくらと桜色に色づいている。アントシアニンまるで職人が丹精込めて作った陶器でできた人形のように繊細で作り物めいた美しい少女だった。
 少年のような地味で露出の少ない服装だけがその容姿を裏切っている。
「弟子のミモザだ」
「よろしくお願い致します」
 主人の簡潔な紹介に続いて粛々と、鈴を転がしたような可愛らしい声で彼女は告げた。その顔はなんの感情も表さず、やはり作り物めいている。
「ミモザ、ここにいるのでこの屋敷の使用人はすべてだ。滞在中何か困ったことがあれば俺がいない場合はこいつらに聞け」
「わかりました」
 そのやりとりは淡々としていてマーサが危惧していたような類の感情は一切感じクロムの効能とれなかった。
「何か質問はあるか?」
 レオンハルトの事務的な問いかけに彼女は少し考えこむと「行ってはいけない場所ややってはいけない禁忌事項などはありますか?」とこれまた事務的な質問を返した。
(なんか思ってたんと違う)
 あまりにも無表情でまるで主人と似たような雰囲気の少女に、マーサは己の危惧を裏切られたにも関わらず落胆した。そこでマーサは初めて自分が来客に対してこの屋敷に新しい風を吹き込んでくれるのを期待していたことに気がついた。
「そうだな、離れには近づくな。それ以外は好きにしてくれてかまわん」
 『離れ』。その単語にぎくりとする。この屋敷の最大の闇とも言うべき場所だ。主人の近寄り難さ、不気味さの象徴であると言ってもいい。あそこに何があるか知っているマーサは用事がない限り近づきたくはないが、この屋敷を訪アントシアニンの効果れた人間はあの場所を気にして入りたがる。それも当然だ。秘されれば覗きたくなるのは人の常である。
「わかりました」
 しかし彼女は理由も聞かずにあっさりとそれに頷いた。それが興味のないフリなのかどうか、マーサには判断がつかない。
「あと修行の合間の空いた時間なのですが、ただ置いてもらうのは申し訳ないのでお仕事をもらえませんか?」
「いいだろう。ジェイド」
「はい、旦那様」
 彼女の要望に主人は鷹揚に頷き、呼ばれた蛙男はすっと近づいた。驚いたことに彼女は彼の容姿にもまったく無表情を崩さなかった。
「この子に仕事を教えてやってくれ。そうだな、仕事内容は……、俺の身の回りの世話だ。ミモザ、これはジェイドという。屋敷のことは彼に任せているから仕事は彼から教わりなさい」
「はい。よろしくお願い致します」
 深々と頭を下げる。マーサは主人の発言におやまぁ、と目を瞬いた。人嫌いの主人が身の回りの世話を任せる者は限られている。若い娘にそれをさせるのは初めてのことだった。
 マーサは必死に亜鉛 の サプリジェイドに『どういうことだろうねぇ、気になる関係じゃないか』とアイコンタクトを送ったがジェイドはちょっと引いた顔で『は?何?』という顔をするだけだった。それに内心でちっと舌打ちをする。有能な奴だがこういう察しの悪いところがあるのだ、ジェイドという男は。
「ではジェイド、さっそく彼女の案内を頼む」
「はい」
 大抵の若い娘であればジェイドに案内役をふられた時点で大概げんなりとしたり期待が外れたような表情をするのだが、やはり少女は顔色ひとつ変えずに「よろしくお願い致します」と頭を下げるだけだった。

 では頼むと言い置いてレオンハルトは執務室へと戻っていった。
 残されたのはミモザと託されたジェイド、そして自主的に残ったマーサだ。ジェイドは何故いなくならないのかという顔でこちらを見ていたがマーサは素知らぬ顔でミモザへ「マーサと申します」と自己紹介をした。
 ジェイドはそれにため息を一つ吐くと「では案内をするぞ」と先頭に立って歩き始める。
「ここが食堂」
「ここが書庫」
「ここが浴室」
 ジェイドは淡々と、そして素早く案内を済ませていく。雑談のざの字もないぶっきらぼうな態度に、しかし少女は特に文句を言うでもなく律儀に頷いていた。ゴーヤ
「あそこが離れ。近づくなよ」
「はい」
 マーサは顔をしかめる。離れのことは目にするだけでも少し不快だ。
 そこはわざと人目から隠すように背の高い木で囲まれ、ちょっとした林のようになっていた。背の高い屋根がかろうじて見えるのみで言われなければ離れの屋敷があることなど気づかないだろう。
「で、ここが倉庫」
 ジェイドは遠目に見えるそれからすぐに視線を移し、すぐ近くのこぢんまりとした建造物を指差した。そこまでスタスタと歩いていくとこれまでもそうだったように一応扉を開いて中を見せる。
 ミモザもこれまで同様にひょこり、とお愛想程度に中を覗いていた。
 ふとマーサも習って近づき、目に入った物に思わず顔をしかめる。
「どうされました?」
 ミモザはそれに目ざとく気づいたらしい。マーサの視線を追って、見つけたそれをじぃっと興味深そうに見つめた。
 『それ』。そう、数日前に買い出しに行った際に目にした、レオンハルトの姿が描かれた皿である。
「これは……」
 少女は戸惑ったように言い淀み、しかし続きを口にした。
「踏み絵に似た不謹慎さと恐ろしさを感じる代物ですね」
「んっふ!」
 思わずマーサは吹き出しかける。それを呆れた目でジェイドが見つつ「これを食事に使うわけがないだろう」と告げた。
「え?じゃあどうするんですか?」
「本気で言ってるのか?飾るんだよ、棚とか壁に。鑑賞用だ」
「………」
dha epa dha 彼女はなんとも言えないような微妙な表情で首をひねると、その皿を手に取りじっと見つめたまま「夜中に目が合いそうで嫌じゃないですか?」ぼそりとこぼした。
「んっは、ははははは!まぁねぇ、そう思うわよねぇ!」
 今度は笑いを抑えきれなかった。そのままばしばしと自分の膝を叩く。
「でもねぇ、巷じゃお嬢さん方に人気なのよ。ほら、旦那様は格好いいでしょう」
「なんで紙じゃなくて皿に書いてあるんですか?」
「紙に描いてあるもののほうが多いわよ。でもなんでか皿に描いてあるのもあるのよねぇ、なんでかしら?」
 2人でじっとジェイドを見る。彼は嘆息した。
「ただの皿を高く売りつけたい商人の陰謀だ。売れりゃあなんでもいいのさ。刺繍とかのもあるだろ」
「へー」
 ミモザは感心したように頷く。
「でもこれ、ある意味で効能がありそうですね」
「効能?」
 訊ねるマーサに彼女はこくりと一つ頷いた。
「野良精霊も強盗も裸足で逃げ出しそうです」
「んは、んはっはっは!確かに!恐ろしくって寄って来れないかも知れないねぇ!」
「一体何が恐ろしくって、一体何が寄って来れないって?」
 愉快な気持ちで笑っていると、ふいに背後から声が響いた。聞き覚えのあるその静かで落ち着いた声に、マーサは錆びついた人形のようにぎぎぎ、と振り返る。
「何をこんなところで油を売っている」
「だ、旦那様!」
 不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、この屋敷の主人が腕を組んで仁王立ちをしていた。
(ひぃぃぃぃ)
 マーサは内心で悲鳴を上げる。怒っている、ように見える。少なくとも不機嫌ではある。
 ああなんで自分はこんなクロム軽口を叩いてしまったのかと後悔する。この気難しい主人の機嫌を直す方法などマーサはおろか、ジェイドも知らないだろう。
 ちらりと横目でジェイドの様子を伺うと、彼も困ったように脂汗をハンカチで拭いながら「旦那様、こんなところでどうなさいました?」と尋ねた。
 それにレオンハルトは親指で空を指し示す。視線を向けるともう日が傾きかけていた。結構なハイペースで屋敷を見てまわっていたつもりだったが、広いお屋敷だけあって結構な時間が経っていたらしい。
「仕事がひと段落したからな、ミモザに稽古でもつけてやろうと探しに来たんだ」
「それはそれは……」
 ジェイドは揉み手をしながら誤魔化すようにへらりと笑う。普段レオンハルトが不機嫌そうな時は使用人達は極力彼に近づかずにやり過ごしているのだ。レオンハルト自身も使用人達に好んで話しかけたり近づいてくることはない。このような事態は本当に稀だった。
「レオン様」
 その事態をどう見たのかはわからないが、平静な様子の声が響いた。ミモザだ。
 彼女はレオンハルトの注目を引くと手に持っていた皿を掲げてみせた。
「ん?ああ、なんだこれか」
 その皿を見てレオンハルトは面白くなさそうに眉をひそめる。
「これがどうした?確か試作品だか完成品だかを商人が持ってきたから倉庫に放り込んでいたんだ」
 その言葉を聞いた少女はとととっ、と軽い足取りでレオンハルトへと近づくと、背伸びをしてその耳元へと口を寄せた。レオンハルトもいぶかりながらもその意図を察して少し屈んで顔を近づける。
(おやまぁ)
 その親しげな様子をマーサは不思議な気持ちで見守った。ちらりとジェイドを見ると彼も目を丸くしている。
 そのまま何事かを彼女が囁くと、レオンハルトは微妙そうな顔をして「君なぁ」と呆れた声を出した。
「何を言うかと思ったら、そクロムの効能ういう事に興味があるのか?」
 その態度は呆れてはいるが先ほどまでよりもずっと柔らかい。普段の近寄りがたい硬質なそれとも違っていた。
「うーん、興味というか。こういうのがあったらそういうのもあるかなって思いまして」
 少女はレオンハルトのその態度を特別不思議には思わないようで自然なやり取りのように話を続けた。その言葉に彼は渋い顔をする。
「あったらどうするんだ」
 ミモザはレオンハルトの顔を見上げた。
「どうしましょう?」
 そのままこてん、と首を傾げる。
 レオンハルトは盛大にため息をついた。
「まぁたぶんあるんだろうが、俺は知らないし知りたくもない。くだらないことを言っていないで、修行でもするぞ」
 そのままレオンハルトは身を翻して歩き出す。ミモザは慌てて皿を元の位置に戻すと、呆気に取られているこちらに気づき、頭を下げた。
「案内ありがとうございました。一端失礼しますね」
「あ、ああ」
 ジェイドがなんとかそれだけ返した。最後にもう一度頭を下げると今度こそ少女はレオンハルトの背中を追いかけた。
「……おやまぁ」
 マーサは驚き過ぎてそうつぶやくことしかできなかった。

 ちなみにその後に庭で目撃された2人の『修行』の光景の壮絶さに、使用人一同は彼女には優しく接しようと決意を新たにするのであった。
アントシアニンの効果マカアントシアニンの効果dha

「じゃあ、そろそろゴーヤ

「じゃあ、そろそ亜鉛 サプリ おすすめろ塔の最上階へと行きましょうか……ゴーヤ
 なんとか立ち直ったジーンは力無くそう言った。まだその顔色は青白い。
「ジーン様はもう鍵を見つけられたのですか?」
「え?ええ、先ほど拾いました」
 そう言って彼dha epa dhaは、銀の鍵を取り出してみせた。
「……………」
「まぁさすがに金は見つかりませんよ。でも思ったよりすぐに見つかって良かったです」
「すぐに」
「ええ、入り口の近くに落ちてまして……」
 にこにこと悪気なく笑うジーン。ミモザは無言で自分のハンカチを取り出すとそこに包んでいた大量の銅の鍵をザーっと地面へとばら撒いた。
「えっ、ミモザさん、随分と大量に……」
 言いかけてマカ気づいたのか彼はそこで言葉を止めた。
「えっと」
「すぐに見つかったんですか」
「え、えーと、どうだったかな」
「入り口の近くで」
「もしかしたら結構込み入ったところにあったかも」
 誤魔化すジーンに、ミモザはにこりと笑いかけた。
「ジーン様、いつ塔にいらしたんですか?」
「えっと、10分、いや15分前かな」
「そうですか、僕は朝の5時頃からいます」
「…………」
「今、何時でしたっけね……」
「え、えーと」
 気まずそうにジーンは言った。
「そろそろ昼食時ですね……」
「ふっ」
 ふっふっふっ、とミモザは笑う。声は笑っているがその表情は半泣きだ。
「ミモdha epaザさん……」
 痛ましいものを見る目でジーンはそっと、ミモザの背中に手を添えた。
「大丈夫です。現実をしっかり受け止めましょう。怖くないですよ」
「うわーん!!」
 ミモザは再び地に伏した。ジーンは先ほどのミモザのように無言でその背中を慰めるように撫でた。

「行きましょうか……」
「はい……」
 2人してしょんぼりと肩を落として歩く。階段を登ってすぐにその扉はあった。
 鍵をさす。回す。
 かちゃり、と小さな音を立ててその扉は開いた。本来なら初めての塔の攻略に感慨深くなるのかもしれないイベントを2人は無感情に淡々とこなした。
 感動するには2人とも心が疲弊しすぎていた。
 扉の向こうには暗闇が広がり、そこには一つだけ光が浮かんでいた。それはゆっくりとこちらへ近づくと右手アントシアニンの甲へと吸い込まれるように消えた。そこには花のような紋様が現れ、その花弁の内の一枚が銅色に染まった。それ以外の残り6枚の花弁は肌色のままである。
「塔の攻略の証ですね」
 そう言うジーンの手の甲には銀色の花弁が輝いていた。
 それを見てミモザはちっ、と舌打ちをする。
(そうだ、試しに……)
 第一の塔で得られる祝福、『観察』を使用してみる。使うことを意識してジーンのことを見てみると、そこにはゲーム画面で見るような表示が現れた。
『Lv強い MP多い HPまぁまぁ』
「………クソゲーめ」
 ミモザ、ハードモード確定の瞬間であった。

「では、僕はこれで」
 塔から出たところでジーンはそう言って小さく手を振って見せた。
「王都はこっちですよ?」
 来た道を指差して見せるがジーンは首を横に振る。
「先生に念のため塔の周辺を見て回るように言われているんです。野良精霊の異常が塔の周辺で起きると大変ですからね」
 ジーンは明言しなかっポリ ペプチドたがおそらくその『大変』の中には塔の試練を受けに来て被害者が出ると被害者遺族の会との関係がまた悪化しかねないことも含まれているのだろう。
 そういうことならとミモザも同行しようか迷ったが、ステラと鉢合わせしてしまう危険性を考えるとそれははばかられて結局見送ることにした。
 ただでさえ銀の鍵が見つからなかったせいで予定が押しているのだ。当初の予定通りにいっていればとっくに帰っている時間である。
 ジーンが塔の奥にある森へ立ち去っていくのを見送って、ミモザもさて帰るかと振り返ろうとしたところで、
「あら、ミモザ?」
 嫌な声がした。見たくはなかったが見ないわけにもいかないのでゆっくりと振り返る。
 風に靡くハニーブロンドの髪、星を孕んだサファイアの瞳、透き通った肌に淡いピンクの艶やかな唇。
 にこりと笑って、彼女は言った。
「奇遇ねぇ、こんなところで会うなんて」
「お姉ちゃん……」
 そばにはアベルを伴って、ステラがそこには立っていた。
「あら?」
 何かに気づいたようにステラは目を見張り、そしてそれを見てふふっ、と嬉しそうに笑う。
「ミモザ、もう塔に行ったのね」
 ミモザの右手を見アントシアニンの効果たのだろう。そこにある紋様は塔を攻略した証だ。
「銅だったの?残念だったわね。でも大丈夫よ、ミモザ」
 彼女は微笑んで、慰めるように続ける。
「次の塔ではきっと銀が取れるわ」
「……うん。そうだといいね」
 ゲームではミモザは銅しか取れない定めであった。次も銅の可能性が高い。
 対してステラはあえてハードモードを選択しなければ銀以上は確実だろう。
(不公平だなぁ)
 はぁ、とため息をつく。
 卒業試合以降ステラときちんと顔を合わせたのはこれで2回目だ。1回目は試合後の夕食だ。その時はさすがにステラも無言で非常に気まずかったが、今の様子を見るにどうやら立ち直ったらしい。
 まぁたった一度の負けでへこたれる人間ではないだろうとは思っていたが、それにしてもご機嫌である。
「……何かいいことあったの?」
「わかる?」
 うふふ、とステラは笑うと「ジャーン」と可愛らしいお花柄の巾着袋を取り出して見せた。
「これなーんだ!」
 そう言いながら巾着袋を開けてその中身を手のひらに広げて見せた。
 じゃらじゃらと流れ出てきたそれは大量の魔導石であった。
マカ と はサプリメント マカdha

「んーー…」 dha epa dha

「んーー…」
 メモ帳を片手に首を傾げるミモザの足元には、おびたアントシアニンの効果だしい量の野良精霊の遺体が散乱していた。
 あれから数刻ほどの時間が経過しマカていた。その間延々と野良精霊を狩り続け、ミモザはある程度チロの扱い方を習得しつつあった。
 とはいえそれはゲームの中の『ミモザ』が使っていた技術をなんとかおさらいし終えた、という程度のものでしかないが。
 記dha epa dha憶の中で把握した技術を書き出したメモ帳に、実際に行えたものはチェックをつけていく。
 達成率は50%といったところだ。
「まぁ、初日だしこんなものか」
 メモ帳を閉じ、手とチロについた血を振り払う。ふと思いついてかがむと野良精霊の遺体に手を伸ばした。
 その白魚のような細い指先で遺体を容赦なく探ると、ミモザはそこから白い結晶を取り出した。
「お小遣い稼ぎ程度にはなるかポリ ペプチドな」
 それは魔導石である。
 ゲームでも野良精霊を倒すとドロップし、売ることでお金稼ぎができるシステムだった。
 そう、魔導石の正体は精霊の核である。今市場に出回っている物はこうして野良精霊を狩って手に入れた物や、もしくは墓を建てるという文化すらなかった太古の時代にあちらこちらに埋められたり遺棄されていたのであろう守護精霊の物を発掘した物であった。
「皮肉な話だなぁ」
 悪質であると禁じられている守護精霊を切り捨てるという行為。しかしこれにより野良精霊が発生し今は貴重なエネルギポリ ペプチドー源となっている。生活を便利にするためにあらゆる場所で魔導石が用いられている現在において消費される量はすさまじく、『過去の遺産』は確実にいずれ枯渇するだろう。今生きている人の守護精霊も死ねば魔導石として利用されることになるとはいえ、毎日の人が死ぬ量よりも魔導石の消費のほうが上回っている以上それは避けられない現実であった。それでも国と教会が守護精霊の切り捨てを禁じるのはその捨てられた精霊の種類によってどのような生態系の変化、あるいは突然変異が生まれるかが予測できないからだ。しかし野良精霊をエネルギー量確保のために養殖するという考えは宗教的、倫理的観念から現状では難しい。
 結局のところ、今いる野良精霊達を絶滅させず、人に危害が加えられない程度の数に抑えながら自然環境ゴーヤの中で保存し適宜必要量を採取するという、いうなれば放し飼いでの養殖のような形で今は落ち着いている。
 この森の中は法律上野良精霊を狩って良いエリアである。特例はあるが一般的に一人が一日に狩っても良い野良精霊の数は20匹まで。
 ミモザが今狩ったのは16匹。全く問題ない範囲である。
 遺体の中からきっちり16個の魔導石を回収し、ミモザは立ち上がった。
 日は少しづつ傾き、西の空が赤色に染まり始めている。
 さて、暗くなる前に帰ろうとしたところで、
「それは、狂化しているのかい?」
 そこで初めてミモザは人に見られていたことに気がついた。
dhaゴーヤ チャンプルー

 空は夕焼けに赤くdha epa

 空は夕焼けに赤く染まっていアントシアニンの効果た。徐々に暗闇が迫クロムの効能ってきており、外を出歩く人間はまばらだ。そしてそんな中、誰もいない裏路地にぽつんと佇む少女がいた。
 白いフードを被って隠してはいるがわずかに美しい金色の髪がこぼれて夕日に照らされてキラキラと光っていた。白いフード亜鉛 の サプリ付きのパーカーに黒い短パン姿の少女は俯いて何かを待っているようだ。伏し目がちな瞳は退屈そうに足元を見つめている。
「おや、また来たのかい。お嬢さん」
 その時建物の影から滲み出るように黒いローブに身を包んだ長身の男が現れた。その男は足音を立てずに地面をまるで滑るように少女に近づくと、その顔を覗き込んで笑った。
「先日、大量に買って行ったばっかりじゃないマカか」
「そうなんですか」
 淡々とそう言うや否や、少女の手にいつの間にか握られていた巨大なモーニングスターメイスが男の胴を薙ぐように振るわれる。
「………っ!?」
 男は間一髪のところでそれを避けた。しかしわずかに棘がローブに引っかかり破ける。
「……ちっ、外したか」
 それを見て少女ーーミモザは嫌そうに舌打ちをした。
「おまえ、誰だ? いつもの客じゃないな?」
 男は訝しげに目を細めて睨む。
 それにミモザはフードを外すことで答えた。短いハニーブロンドの髪が風にさらされる。
「よくぞ聞いてくださいました。僕は貴方の常連の女の子の双子の妹」アントシアニン
 そこでミモザは両腕を真っ直ぐに伸ばすと時計回りにぐるりと回し、斜め45度ほど上方へとビシッと伸ばしてポーズを決めた。
「人呼んで、筋肉大好き少女、ステラです!」
「筋肉大好き少女、ステラ……?」
 男はしばし何事かを思い出すように考え込んだ後で
「それは俺の客の方の奴の名前だろう」
 とつっこんだ。それににやり、とミモザは笑う。
「おや、姉の名前をご存知でしたか。そのご様子だと顧客リストなどの情報をまとめている匂いがぷんぷんしますね」
「だったらどうした」
「ご提供いただけますか?」
 男はふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「しない」
「でしょうね。ああ、僕はミモザと申します。どうぞよろしくお願い致します」
「お前は騎士団の犬か?」
ゴーヤ その質問に考え込むのは今度はミモザの番だった。
(……犬?)
 別に騎士団に所属はしていないが、従っていると言う意味ではまぁ、確かに、
「犬かも知れないですね」
「なんだその曖昧な返答は」
「微妙な立ち位置だということです。まぁ、騎士団の味方です」
「あいつらは嫌いだ」
 男は年齢にそぐわぬ拗ねたような表情をして言った。その言い様にミモザはこてんと首をかしげる。
「なぜですか?」
「卑怯者だからだ! 集団でよってたかって……っ」
「集団で戦うことが卑怯ですか」
「そうだ!」
 男のその発言に、ミモザは「この人もぼっちなのか……」と口の中だけでつぶやいた。
 ミモザの胸の内にかつての自分の学校生活の記憶が蘇る。
 そして彼女は可哀想なものを見るような目で男を見ると、ゆっくりと首を横に振った。
「いいえ、残念ながらその認識は誤りです」
「なんだと!」
「それは世界の摂理なのです。すなわち……」
 いきり立つ男を手で制しつつ、ミクロムの効能モザは彼を真っ直ぐに見据えて告げた。
「仲間が多いのは卑怯ではなく、ただのステータス!」
「………っ!」
 ぐっ、とそのまま自身の胸元を手で掴む。この言葉はミモザ自身にも効く諸刃の剣だった。
 しかし言うことは言わねばならない。
「ぼっちは肩身が狭いのが悲しいですがこの世界の摂理であり、弱肉強食のルールなのです」
「お、おまえ……」
 男はわなわなと震える。そしてミモザのことを批難するように指差した。
「なんて酷いことを言うんだ! おまえ、さては嫌な奴だな!」
「まぁ、否定はしません。しかし残酷なようですがそれが真実なのです」
 そこでミモザは慰めるように笑いかける。
「でも大丈夫ですよ。他人は他人、自分は自分、とちゃんと切り分けて考えることができるようになれば、一人でも気にせず快適に過ごせるようになりますから」
「もう怒ったぞ! おまえは生かして帰さない!!」
 そう言って彼は懐からじゃらりと鎖で首にかけていたと思しき黒い五角形を取り出した。五角形には向かって右下に金色の印が付いている。
「俺は保護研究会、五角形のうちの一角、バーナードだ! いざ、参る!」

 こうして戦いの幕は切アントシアニンって落とされーー、なかった。
 数分後、ミモザはじゃらじゃらと連なった鈴を両手に持ち、じゃんじゃか振り鳴らしながら踊っていた。
 勝率を上げるおまじないの舞いである。
「……それ、いつまで続くんだ?」
 バーナードは腕組みをしてそれを眺めている。それに爽やかな汗を振り撒きながらミモザは笑顔で答えた。
「あと3分ほど!」
「おまえ馬鹿だろ」
 その呆れたような言葉にふふん、とミモザは得意げに笑う。
「けど貴方は待つでしょう?」
「ああ?」
「最高のコンディションの人間と戦いたい! 卑怯を嫌う貴方はその欲に抗えない!」
「……ふん、さっさとしろ」
(狙い通り)
 ミモザはにやりと笑う。事前の情報通り、彼は逃げ回る割には自身の強さを証明したくて仕方がないらしい。おかげでミモザもゆっくりと戦いの準備ができるというものだ。
「貴方、保護研究会と言いましたが、どうしてこんなことを?」
 じゃんじゃかじゃんじゃかと鈴を鳴らして踊り狂いながらミモザは尋ねる。それに彼は少し聞き取りづらそうにしながらも「研究資金を回収するためだ」と律儀に答えた。
「今回のこの薬ができたのは本命の研究の副産物に過ぎん。古代の魔薬生成を試みた中のうちの一つだ」
「本命?」
 首をかしげる。彼はふふん、と得意げに笑う。
「不老不死アントシアニンの研究だ」
「……できるとでも?」
 不信げにミモザが尋ねると、彼は鼻息荒く「できる!!」と断言した。
「エオの奴がそれをずっと研究してるんだ! それを俺が先に開発して鼻を明かしてやる!!」
「……はぁ、エオとは?」
「保護研究会のうちの一角だ。あの野郎、すかしやがって。俺の方があいつなんかよりもすごいんだ!!」
 うすうす気づいてはいたが、どうにも彼は子どもっぽい性質の持ち主らしい。善悪は関係なく、自身の好き嫌いの感情のみで動いているようだ。
 彼は苛立ったように腕組みをとくと袖口から現れたムカデを鞭へと変え、それをしならせて地面を打った。
「あいつ、生意気だ。俺の方が年上なのに、研究だって長くやってるのに、次々と成果を上げてるからって調子に乗りやがってっ。ロランの奴もどうしてあんなのとつるんでるんだ!」
 そのままぶつぶつと文句を言い始める。
 じゃらじゃらと鈴を鳴らしながら踊り狂う少女とそれを意に介さず内にこもってぶつぶつと文句をたれる長身の黒ずくめの男。
 かなり異様な光景がそこには繰り広げられていた。
 しばらくそのような景色が続いたが、それは何度目だっただろうか。バーナードが再度苛立たしげに鞭を地面に振り下ろした際に、何かに気づいたようにその手を見つめ、ハッと顔を上げる。
「……貴様っ!!」
「ふっふっふ」
 その反応にミモザはやっと踊るのをやめて不気味に笑った。
「今更気づいても遅いですよ! 貴方には毒を盛らせていただきました。身体が痺れるでしょう。踊りながら痺れ薬をまかせていただきゴーヤましたよ!」
 ビシッとバーナードのことを指差す。それに彼は悔しそうに顔を歪めた。
「カスがっ! おまえも吸ってるんじゃないのか?」
 その言葉にミモザはふ、とニヒルに笑う。
「当然! 僕にも効いています!」
「おまえ馬鹿だろ!」
「何を失礼な、これを見てもそう言えますか?」
 そう言って自慢げにミモザはポケットから小さな液体の入った瓶を取り出して見せる。
「それは……」
「解毒剤です」
 それを見せびらかすように天高く掲げてミモザは堂々と宣言した。
「さぁ、観念しなさい。僕は犯罪者と正々堂々と戦うなどはしない。貴方の言う通り『嫌な奴』ですからね。あなたがしびれて動けなくなったところをのんびりと捕縛させていただきますよ」
 にんまりと笑う。
「そろそろ身体が辛くなってきたんじゃないですか? 降伏するなら今のうちですよ」
「……ちっ」
 バーナードは苦々しげに舌打ちをした。そして諦めたかのように両手をだらりと下に下げた。ーーと思った次の瞬間、彼はミモザの背後へと移動していた。
「………っ」
 繰り出された鞭をミモザは持っていた鈴を投げることで防ぐ。バーナードの足元には魔法陣のような物が光っていた。
(移動魔法陣!?)
 やられた、と思う。確か第4の塔で手に入る祝福だ。彼はあらかじめミモザの背後に移動魔法陣を仕込んでいたのだ。いや、きっと背後だけではない。彼がいつも決まった場所にしか現れなかったのは、この周辺一体に移動魔法陣を仕込んでいるからなのかもしれなかった。
 動揺したミモザの手が無防備にさらされる。その手に握られた解毒剤目掛けて鞭がしなった。ミモザはたまらずそれを手放すことで攻撃を避けた。
 彼の鞭が解毒dha epa剤の瓶を器用に掴み、引き寄せたところで鞭を持つのとは反対の手で受け止める。
 バーナードはにやりと悪辣に笑うと、ミモザに見せつけるようにその瓶の中身を飲み干した。
 辺りに空き瓶が地面に落ちて割れるかん高い音が響き渡る。
「馬鹿め。余裕をかましてるからこうなるんだ。
形勢逆転だな。それとももう一つ解毒剤があるのか?なら飲むまで待ってやってもいい。俺は卑怯は嫌いだからな」
「……… 」
 ミモザは無言でうつむいた。それにバーナードは嬉しげにテンションを上げる。
「どうした!? 早く選べよ! ふふん、ショックで言葉もでないか!?」
 それでもミモザは動かない。ただうつむいて黙ったままだ。
「うん? お前もしかしてもう薬が回って……っ」
 バーナードが訝しげにミモザに近づこうとして、そこで息を詰まらせる。苦しげに胸を押さえ、その体がゆっくりと横へと崩れ、地面へと倒れ伏した。
「……あっ、ぐぅ……、な、んで……っ」
 苦しげにはかはかと息をする。そんなバーナードの様子にミモザはそこでやっと動き出し、ゆっくりと彼に歩み寄った。
「言ったでしょう。僕は犯罪者と正々堂々となんて戦わない」
 近くまできて、足を止める。その澄んだ湖面のように青い瞳で苦しむ彼を見下ろし、ミモザは言った。
「『嫌な奴』ですから」
 うっすらと微笑み、ミモザは彼の手から鞭を蹴り飛ばす。それはやがて力無く小さなムカデへと姿を変えた。
「貴方の飲んだ薬、解毒剤というのは嘘です」
 それを興味なさげに見ながらミモザは続ける。
「本当はそっちが毒でして、いやぁ、飲んでくれて助かりました」
 踊っている時、ミモザが撒いたのは毒薬ではなく新技『殺虫剤』である。しかしそれだけでは指先などが痺れてピリピリするだけで捕獲には至らない。だから自主的に毒を服用させるためにわざと自分自身に効くはずのない魔法ではなく、薬を撒いたと嘘をついて偽の解毒剤を見せびらかした。これは合成スキルを使って作り出した本dha当に全身が痺れてしまう即効性の毒である。死にはしないが半日はろくに動けないだろう。
 もはや何も言えず意識を朦朧とさせるバーナードに、
「黒い密売人さん、つっかまーえーたっ」
 そう歌うように言ってミモザはポケットに入れていた信号灯を取り出すと火をつけた。
 パシュッと小さな音を立ててそれは空へと上がり、居場所を知らせるように周囲を光で照らし出した。

 信号灯の明かりが空に瞬く、とともにレオンハルトは風を切って駆け出していた。
 最短距離を行くために建物の屋根の上を彼は疾走する。
(無事だろうか……)
 ミモザのことだ。事前に作戦は聞いて知っているが、それでも心配は尽きない。
 レオンハルトはいつも前線に立っていた。危険な時、予測が難しい時、困難なケースほど先陣を切るのはレオンハルトだった。
 だからこうして、誰かを心配して結果を待つなどという行為に彼は慣れていない。
(まったく……)
 レオンハルトは自分で自分に呆れる。
 始めに弟子として迎え入れた時は、自分がこんな風になるだなんて考えてはいなかった。ただ自分と似たような境遇の子どもを気まぐれにそばに置いただけだったというのに。
 ミモザが、こんなにもレオンハルトの心の中を大きく占める存在になるなど想定外だ。
 その時きらりと暗闇に光る物をレオンハルトの目は捉えた。それが彼女の金髪だと気づいて地面に降り立つ。
「無事か」
「はい」
 短く聞くと短く返事が返ってくる。彼女のそばには黒いローブをまとった男が倒れていた。
 それが動けない状態であることを確認すると、ミモザに怪我がないかどうかを素早く確認した。
 彼女は無傷だ。
 それにほっと息をついて、改めてレオンハルトはミモザを見下ろした。
 ミモザはレオンハルトの視線に気づいて悪戯に成功した子どものように、にやりと笑う。
「勝ちましたよ、僕」
「ああ」
 レオンハルトは軽く頷いて、笑った。
「よくやった、ミモザ」
 弟子にとらなければよかっただろうか、とレオンハルトは口に出せずに思う。そうすればこのような危険なことに彼女ポリ ペプチドを駆り出さずに済んだだろうか。
 しかし彼女が自分の隣にいないという状態を、レオンハルトはもう想像できないのだった。
マカ サプリ亜鉛マカ サプリ亜鉛 サプリマカ サプリ

 さて、第一王ポリ ペプチド

 さて、第一王子アズレン・アルタイル・アゼリアはステラの攻略対象のうちの1人である。
 クロムただし、『バッドエンドの扱いの』という注釈がつく。
 これには三つ理由が亜鉛 サプリある。
 一つ目はこのアズレン王子が『誰も攻略できなかった際に救済措置』として結ばれる相手だからである。実はこのアズレン王子、ゲーム中に仲を深めるようなイベントは存在せず、お話の中にちょこちょこマカ サプリ登場する脇キャラである。通常の乙女ゲームでは条件を満たせず誰も攻略できなかった場合は誰とも結ばれないエンドが存在したりするが、このゲームではその際にお情けとしてこのアズレン王子と結ばれるのだ。つまり何もせずにだらだらしていると結ばれるお相手ということである。
 二つ目はこのアズレン王子、婚約者がいてそのお相手が正妃に内定している。つまりステラは側妃として迎えられるのである。これは両思いを目指すプレイゴーヤヤーとしては気に入らないだろう。
 そして三つ目、これはーー
 音楽とともに2人の人物が入場してきた。1人は細身の女性である。紫がかった銀髪を緩やかに結い上げ深い翡翠色の垂れ目をした、たおやかな女性である。彼女は群青色の美しいドレスを身に纏い、物静かな風情で立っていた。
 そしてその隣には金髪碧眼のマッチョがいた。
「ふんっ!」
 おもむろにそのマッチョがマッスルポーズを取ると胸元のボタンがブチィッと音を立てて弾け飛ぶ。見事な大胸筋が露出した。
 健康的に日焼けした肌は何かのオイルを塗ゴーヤっているのかテカテカしている。
「皆の衆、本日はよくぞ集まってくれた!」
 マッチョは別のマッスルポーズへと姿勢を変えた。
「今日ここで!私はエスメラルダを婚約者とすることを皆に誓おう!!」
 その満面の笑みを浮かべる口で、白い歯がきらりと光る。
 しばらく会場のみんなは沈黙した。その後我に返ると自分達の役割を思い出し、盛大な拍手をした。
「ありがとう、ありがとう」
 にこにことマッチョこと、アズレン王子が手を振る。
 ーーこれが三つ目の理由。王子は筋肉キャラだった。
 今日って王子の婚約披露宴だったのか、とミモザはやっと状況を理解した。

 ホールには穏やかな音楽が流れていた。皆それぞれ歓談したり、食事や飲み物を口に運んだりとその場の空気を楽しんでいる。
 王子達へと挨拶は一組ずつ呼ばれて行うゴーヤらしく、ガブリエルは「呼ばれたから行くわ」とオルタンシア教皇が呼ばれたタイミングでいなくなってしまった。
 ぼんやりと眺めているとこちらに駆け寄ってきた若い使用人が「次です」と囁いて王子の元へと先導するように歩き始めた。
 当たり前のようにレオンハルトが腕を差し出すので若干「僕も行くのか……」と内心思いつつその腕に手を添えてミモザも歩いて着いていく。
 隣を歩くその顔を横目でちらりと見上げると、一応その表情は穏やかな笑みを浮かべていたが、目が死んでいた。
(……苦手なんだろうなぁ)
 その表情を見て悟る。基本的にはローテンションな人だ。あのようにハイテンションな人は不得手なのだろう。ちなみにミモザは人付き合い全体が不得手だが、ハイテンションな人は嫌いではない。
 というよりはあの立派な筋肉が気になる。
(どうやってあそこまで育てたんだろう……)
 ぜひ教えてもらいたいものだ、と思うがそんな不敬は許されないだろう。
「おお!よく来たな!レオンハルト!!」
 あれこれと考えていると、まだそゴーヤの目前まで辿り着いていないのに馬鹿でかい声が鼓膜を叩いた。
「お前の顔が見れて私は嬉しいぞ!!」
「……俺もです。殿下」
 距離にして5mはありそうな遠くから叫ばれてレオンハルトは一瞬嫌そうにしながらもすぐに笑みを取り繕い、足早にその目の前へと馳せ参じる。
 そのまま騎士の礼を取るのに、ミモザも慌てて真似しようとして思いとどまった。
(危ないっ)
 今はドレスを着ているのだと思い出し、すんでのところで淑女らしくカーテシーをして見せた。
 レオンハルトの付けてくれた教師は淑女としての作法も色々と教えてくれたが、所詮は付け焼き刃、油断するとうっかり忘れてしまう。
 こっそり冷や汗をかいていると「おお!」と頭上から歓声が聞こえた。
「それが噂の弟子か!!くるしゅうない!面をあげよ!!」
「はっ」
 レオンハルトが顔を上げるのに合わせてミモザも上げる。目の前で見る筋肉の塊はなかなかに迫力があった。身長こそレオンハルトの方が高いものの、筋骨隆々と盛り上がったその体躯はその肉感ゆえに圧迫感がすごい。心なしか彼の周辺だけ温度が2、3度高い気もする。
 思わずまじまじと見つめてしまうミモザに、彼はその無礼を咎めることなくにこりと笑dha epaった。
「私に何か気になるところがあるか?」
「筋肉が……」
「うん?」
「とても美しいと思いまして」
 彼はぽかんとした後、弾けるように笑い声を上げた。
「そうか!!そういった感想はなかなか稀だ!」
「殿下、笑いすぎです」
 側で控えていたスキンヘッドにサンタひげをした男性が静かに首を横に振って言う。彼は宰相のオーティスだと先ほどガブリエルが教えてくれていた。その淡い水色の瞳は呆れている。
「名は何と言う」
 宰相を無視して続けられた言葉にミモザは慌てる。そういえば名乗るのもまだであった。
「失礼致しました。レオンハルト様の弟子のミモザと申します」
「うむ!ミモザか!!先ほどはなかなかの余興であった!!」
「は?余興……?」
 溌剌とよくわからないことを褒めるアズレンに、レオンハルトは渋い表情で「やはりあれは殿下の差し金でしたか」と告げた。
「あれ?」
「先ほど君のことを睨んでいる女性がいただろう」
 レオンハルトの言葉にああ、と思い出す。確かに2人ほど目についた。彼女達がアイリーンとセレーナという名の伯爵令嬢なのだと、やはりガブリエルが教えてくれたのは記憶に新しい。
「あの2人は犬猿の仲で有名でな。余程のことがない限りは2人そろって同じパーティーに呼ばれることはない。わざと呼んだんだ、ここにいるアズレン殿下が」
 思わずアズレン殿下の顔を見ると彼はにやりと笑った。
「あの2人はレオン亜鉛ハルトを取り合っていつも派手な喧嘩を繰り広げているのだ」
 その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は眉間に皺を寄せたまま黙っている。
「悪趣味ですよ、殿下」
 代わりに宰相がぼそりと苦言を呈した。
「いやぁ、見事な流れであった!2人の喧嘩からのミモザ嬢の登場!!まるでよく出来た喜劇だ!いやいやあそこまで真に迫った表情は劇場では見られんな!」
「殿下」
 咎める宰相に王子は「いいではないか!」と呵呵と笑った。
「我々王族は国民を守るための防衛システムのようなものだが、多少臣下をからかうくらいは許してもらわねばな!政務をする気もなくなるというものだ!!」
「不謹慎です」
 宰相は渋面だ。
「いやしかしミモザ嬢。貴方もなかなか良い筋肉だ。普段はどのようなトレーニングを?」
 気まぐれな気性の持ち主なのか、彼は唐突に話題を変えた。見事なマッスルボディの持ち主にふいに筋肉を褒められて、ミモザは思わずぱっと頬に朱を散らす。
「え、えっと、殿下のトレーニングには敵わないかと思われますが、一応筋トレは一通り……」
 もじもじと告げる。
「なるほど、いやしかし実用的な筋肉だ。トレーニングだけではあるまい」
「えっと、そのう、鈍器を少々振り回す程度でしょうか」
「鈍器!素晴らしい!私はよくバトルアックスを振り回しているぞ!!」
「素敵です」
 ミモザは大真面目に頷いた。2人の間には筋肉をとおして通じ合う、信頼に似たなんらかの感情が生まれつつあった。
「のう」
 しかし思わず握手をしかけた2人の間にずずい、と割り込む声がする。そdha epaちらを見ると婚約者であるエスメラルダがミモザをじっとりと睨んでいた。
「のう、そち、今のは聞き間違いかの」
 彼女はゆっくりと数歩前に出ると威圧するようにミモザに顔を近づける。
「わらわの勘違いでなければ、今そなたはわらわの将来の夫をたぶらかしたかの?」
 氷のような視線である。ミモザは震え上がった。
「め、めっそうもないです!」
「ほう?ではどういうつもりじゃ」
「そ、その、素晴らしい筋肉の持ち主なので、憧れと申しますか……」
 その返答に彼女はその整った眉根を寄せた。
「むぅ、まさかこのような変態筋肉だるまに興味のあるおなごがおるとは……、盲点じゃった」
「今変態筋肉だるまって言いました?」
 宰相が尋ねるがそれは無視された。
「まさかそなた、我が将来の夫が好みだなどと申すまいな」
 ミモザはぶんぶんと首を横に振る。しかし彼女は納得できないらしい。そのままぐいぐいとミモザに詰め寄る。
「では、どのようなおのこが好みじゃ。もうしてみぃ!」
「え、えーと、」
 ぐるぐると思考が空転する。結果、一番最初にに思い浮かんだ相手は、
「れ、レオン様です!」
 だった。
 エスメラルダはむぅ、と唸ると「我が将来の夫とはまるで違うようじゃな」と頷いた。
「ではまぁ、許してやろう」
「あ、ありがとうございます」
「しかしゆめゆめ忘れるでないぞ。我が将来の夫に手を出してみよ」
 彼女は夫の隣へとゆっくり戻るとミモザを見下ろして胸を張った。
「そなたのことは、ほっぺたをぐりぐりする刑に処す」
「は、はぁ」
 思ったより可愛らしい刑だ。
「焼けた鉄での」
「絶対に手を出しません!!」
 前言撤回、えげつない刑だった。
「はっはっはっ!すまんな、ミモザ嬢。我が将来の妻は少クロム々嫉妬深いのだ!!」
 すすす、と彼女は殿下に近づくとそのまま彼の肩へとしなだれかかった。
「そなたがわらわにつれないのが悪いのではないか」
 その顔は恋する乙女そのものだ。
「よしよし!可愛いやつめ!はっはっはっ!」
 快活にそう言い放った後、アズレンは面白がるようにミモザとレオンハルトを見てにやりと笑った。
「しかしまぁ、おかげでめずらしい奴の面白い顔が見れた。感謝するぞ、ミモザ嬢」
「面白い顔?」
 首を傾げるミモザの横で、最初に話して以降はずっと無言で佇んでいたレオンハルトは誤魔化すように咳払いをした。
アントシアニンゴーヤ チャンプルーdha epa dhaゴーヤ